「今年この木に初めて桃がなったんだよ」と
あまりにも嬉しそうにあなたが話すので、
私は聞きたかったことがあったけれど、
その場でぐっと飲み込んだ。
「今年この木に初めて桃がなったんだよ」と
あまりにも嬉しそうにあなたが話すので、
私は聞きたかったことがあったけれど、
その場でぐっと飲み込んだ。
壁ごしの、窓ごしの、レンズごしの……。
フィルターを透過するごとに重なるフォルム、薄く淡く。
強さ増す光、輝き放つ。
先日の岡山に桃狩りに行った際にお世話になったのは、明石に住む友人夫婦。
今回の旅の最終日、どこに行きたい?と尋ねられ、
洋館じゃない神戸を観光したい!と伝えた。
連れて行ってもらったのが元町「有楽名店街」。
日曜日の昼間ということで閉まっているお店が多かったが、
開いているお店から漂う料理の匂いの美味しそうなことといったら!
ついつい引き寄せられそうになったけれども、
この日のお昼はとんかつと決めていたのでここはぐっと我慢(笑。
次はもっとお店が開いている時に、
お店の誘惑を振り切りながら、いえいえずぶずぶと惑わされながら、
ぶらぶらと歩いてみたい。
昼食を取った後は、海岸通りをぶらぶらと。
古いビルの一角を使った雰囲気のあるお店があちらにもこちらにもあり、
冷やかしに入るにも少しだけドキドキするけれども、
これ素敵じゃない?あれ似合うと思うんだけどなぁ?
そんな会話を交わしながらいろいろなものを見たり、手にとったり、
そしてこれといったものを購入するのはとっても楽しい。
都心にはこの手のお店がどんどんなくなっていき、
新しくできるのは大規模な店ばかりで、
品揃えはどこも変わり映えがなく、
はっきりいって全く魅力がない。
人が、いや私が暮らしていく上で、あるべき豊かさって一体なんなんだろう?
近くにあって欲しいものって一体なんなんだろう?
私はどんな暮らしがしたいのだろう?
そんなことをついつい考えてしまった神戸散策だった。
2015年8月1日(土)、岡山に桃狩りへ。
昨年も企画されていた旅企画、所用があり参加できなかった。
もしまたこの企画があるのならさんかしたいなとずっと思っていた。
思っているとなにかしらのきっかけがどこからともなくやってくるわけで、
今年の4月くらいに「夏に、それも清水白桃の出回る時期に岡山に桃狩りに行かない?」とお声がかかった。
これはチャンスだっ!と思い、鉛筆で手帳に「桃狩り、清水白桃、8月上旬」とすぐにメモした。
その後、人事異動があったり、母が入院したりと、
本当に行けるのかしら?と思えるようなことが何度かあったが、
1年越しで夢が実現した。
やはり書くということは夢を叶える上で重要なことだと実感した。
残念ながらその前の週にこの地方を襲った台風のせいで、清水白桃を狩ることはできなかったが、
果樹にたわわに実る真白き桃はとても美しく、甘い香りがそこらじゅうに漂っていた。
柔らかく手で包み、優しく手で木からもぎ取る。
狩った桃の食べごろは3日後くらいから。
自分で狩ったものはただそれだけのことなのに特別で、
箱から香る匂いを嗅いでは笑みがあふれてしょうがなかった。
愛しい、愛しい、私だけの桃。
その後、まさに食べごろの白桃を食す。
皮をむいた瞬間、手に果汁が滴り落ちる。
果肉を食べる、果汁を舐める。
みずみずしい桃を余すところなく味わい尽くすためにどうしたらいいか、
ただただ五感だけを張り詰めた。
食べるってきっとこういうことだ。
食したあとは、なぜだろうか、身体中から桃の匂いがした。