喪失から慕情へ

友人の作ったレモンを使ってマーマレードを作った。ジャム類を作るのは久しぶりで、手順を忘れているかと思ったら、思いの外身体が覚えていた。必要なグラム数、どのくらい煮詰めればいいのか、その時の状態を確認しながら作業を進める。柑橘類は煮詰める時間を見極めるのが難しい。足りないと緩すぎてソースみたいになるし、煮詰めすぎるとピールのよう固くなる。ここだという瞬間で火を止め、冷めるのをじっと待つ。しばらくたってから蓋を開ける。マーマレードはゼリーのように緩く固まっていた。いい塩梅、思わず顔がにやっと笑う。

こまごまとしたことをやることが私の暮らしの一部だったが、父が亡くなってからというものすっかり遠ざかっていた。最初は全くやる気も起きなかった。少し時間が経つとやろうかなと思たりもしたが、なかなか手をつけられず、やらずじまいだった。それがようやくここ最近になって再び暮らしの中に取り戻し始めている。もしかしたらそれは、父を亡くしたという喪失がようやく癒え、懐かしく、そしてようやく父と過ごした日々を愛しく思えるようになったからなのかもしれない。

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