「会いたい人には必ず会える」

グループ展の芳名帳に懐かしい名前があった。
彼女は2年前にガーナで出会った日本人男性と結婚し、シエラレオネという国で暮らしていた。アフリカとは全く縁のない私だが、彼女のおかげで少しアフリカのこと、シエラレオネのことを学ぶことができた。その彼女の名前が芳名帳にあったのだ。驚かないわけがない。
芳名帳にはコメントがついていた。東京には短い間しか滞在しないこと、このあとはアフリカに帰るのではなく、だんなさまの実家で暮らすということ。そして最後に会えてよかったとつづられていた。いてもたってもいられなくなった私は、彼女に展示を観てくれてありがとうと早速メッセージを送った。
彼女からの返事はすぐに帰ってきた。SNSからすっかり遠ざかっていた彼女は、私が展示を行っているとは全く知らなかった。けれども、これから生まれてくる命のために(そう、彼女は妊娠もしていたのだ!)撮り続けるだろう写真をどうやってまとめようかと思い、偶然にも展示会場の下にある写真屋さんを訪れたのだった。「会いたい人には必ず会える」。そう結んでくれた彼女のメッセージを読むたびに、会いたかったなぁと思う寂しい気持ちや、元気でよかったと思う嬉しい気持ち、母になるのかぁと驚きの気持ちが交互にやってきた。彼女の幸せを祈らずにはいられなかった。
「会いたい人には必ず会える」、いつか私は彼女とどこかで出会うのだろう。その日が今から楽しみでたまらない。

細川亜衣著『野菜』

2週間にわたった修了展が昨日終了した。あっという間だったなと思うと同時に、これでようやく一休みできるとほっとしている。これから来年末の個展までひっそりと潜んで作品を作ろうと考えているところだ。
今回の展示は、これからは食べ物や料理をモチーフに作品を作っていくと決意表明となるよう構成した。そんな記念すべき展示を多くの方が観てくださり、また気にかけてくださったことをとても嬉しく思っている。この場を借りてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
帰り道、個展会場である古本屋さんに顔をだし、次の個展はこういうものを飾りたいのだけどと今回の作品の中から1点、一番気に入っているものをみてもらった。「うん、いいんじゃない?」と言ってもらい、嬉しかった。「今度は文章も一緒に展示してみたら?」と提案され、ちょっとその場で考えた。脳裏に浮かんだのは、細川亜衣さんの「スープ」という本だった。小説のように流れるレシピとエッセイ、そして在本彌生さんがハッセルブラッドで撮影した写真。料理本とは思えない、ざらつきのある紙で作られた本。あとはいろいろな方の献立日記。細川さんはもちろん、沢村さん、茨木さん。高山さんもそれに近いかもしれない。
例えば私の献立日記を展示するのはどうだろう?ノートブックをそのまま置くのもありだ。この文章のような軽い読み物みたいなものがあってもいい。写真とはなれすぎないようなものと、思いっきりはなしたものと。そんなことを考えながら、家路についた。
古本屋で細川亜衣著『野菜』を購入した。「次は『野菜』なのよ」と綺麗にほほえんでいる彌生さんがふっとよみがえった。そういえば、フィルムで食べ物や料理の写真を撮ってみようと思ったきっかけは、彌生さんの『スープ』の写真だったけ。大丈夫、私が進んでいく方向はこれでいい。